あなたも解けるフェルマーの定理完全証明

小野田襄二  めいけい出版  2477円

購入日:2003/10月頃

 数学はこの世で一番かっきりとした学問であり、 そこにはトンデモの入る余地など全くないと思っている人も多いかもしれませんが 全然そんなことはありません。 ガウスだってヒルベルトだってみんな間違いくらいおかしているのですから。 彼らは権力を使って我を押し通すなんてこともしているので 数学の始まりからして十分トンデモと言えるのかもしれませんが、 彼らは数学においてその欠点を補ってあまりある業績を上げているので 多少の間違いくらい大目に見てやるべきではないでしょうか。
 さて現代においてもやはりトンデモ数学者というのは存在するのですが、 昨今の彼らはすっかり小者に成り下がってしまい パラダイムを一変させるようなトンデモはまったくもって出てきません。 残念なことであります。
 ここで紹介する小野田襄二もそんな小者の一人です。

 フェルマーの定理とは、 こんなところを見ている人で知らない人はいないと思いますが一応書いておきますと、
an+bn=cn
はn≧3のとき自然数解を持たない、というものです。
((a,b,c)=(0,0,0)(0,1,1)等は自然数に非ず)

n=2のときはいわゆるピタゴラスの定理であり整数解は無限にあることも知られていますが、 n≧3になると途端に答えがまったくひとつもなくなってしまうというのがフェルマーの主張です。
フェルマーは17世紀の数学者(当時数学者という職業はないが)であり、 ディオファントスの「算術」という当時の数学の教科書を読んでは、 余白に彼自身のメモや証明を書き記していました。 フェルマーの定理については、命題を示した後、
「真に驚くべき証明を発見したが此処に書き記すには余白が狭すぎる」 などという文を残して証明自体は残しませんでした。
この1637年に書かれたメモがまさか360年にもわたって誰の証明をも受け付けない 孤高の峰になるとは誰が予想し得たでしょうか。
 ちなみに現在では、フェルマー自身はnが4の倍数の時については証明を得ていただろうが、 それ以外の時には得られていなかっただろうというのが通説になっています。

 さてフェルマーの定理は1994年、アンドリュー・ワイルズによって証明されました。 それも、フェルマーの定理が間違っているとすると 谷山・志村予想の反例となる楕円曲線が存在することになるからフェルマーの定理は正しい、 などという一見何を言っているのかすらわからない方法で証明されました。
 もう少し具体的に言うと、
谷山・志村予想
「有理数体上の楕円関数は全てモジュラー楕円関数である。」
(米仏共同チームが2001年に証明)
セール予想
「谷山・志村予想が正しければ、フェルマー予想が正しい。」
(リベットが1986年に証明)
のうち谷山・志村予想のフェルマーの定理に必要な部分だけをワイルズが証明した、 ということになります。
全然具体的じゃないっていうかそもそもさっぱりわかりませんかそうですか。

 さてここまで材料を述べた上で調理に入るわけですが、 実際上の知識は全く必要ありません。だってなー。初等的証明だし。
 完全証明の骨子はひとつ。
bn=cn-an
と変形して因数分解、です。

 誰もが
an+bn-cn=0
と変形し訳のわからない迷路に入っていくがそれが間違いだ、 因数分解すなわち積の構造こそが真理だ、と筆者は言うのだが 本気で360年間誰もそんなことに気付かなかったとでも思っているんでしょうかね?


この人の文章は数学の形になってなくて非常にわかりにくいのですが、 以下がんばって証明の概略を示してみます。

n=3のとき、 b3=c3-a3=(c-a)(c2+2ca+a2)= (c-a){(c-a)2+3ca}=Pとなる。
左辺は1,b,b2,b3の約数を持つ。

c-a=P1
c2+2ca+a2=P2
と置くと、
このときP1とP2の最大公約数はc-aが3の倍数の時3、それ以外の時は1となる (証略)

bがふたつ以上の数の積でできている可能性を考慮して b=33pb1b2と置くと、 以下の三つに場合分けできる。

最大公約数が1の場合、
c-a=P1=(b1)3
c2+2ca+a2=P2=(b2)3

最大公約数が3の場合、
c-a=P1=3(b1)3
c2+2ca+a2=P2=33p-1(b2)3

もしくは
c-a=P1=33p-1(b1)3
c2+2ca+a2=P2=3(b2)3

何れの場合も、b2が無理数になれば必ずbが無理数になるので
c2+2ca+a2=(b2)3
を条件吟味すればよいことになる。
ここから先が日本語になってない上に答えすらも書いてないようなのでよくわからないのだが とにかく正しいらしいですよお兄さん。

n>4のときは、
bn=b・bn-1=cn-an= (c-a)(cn-1+cn-2a+…+an-1)
b≠(c-a)
bn-1≠(cn-1+cn-2a+…+an-1)
を利用すれば証明できるそうです。


 まあ、正直そんな内容はどうでもいいんです。だって、
表紙から既に間違ってるんだもの。

表紙部分にはこんなことが書かれています。
b3=c3-a3=(c-a)(c2+2ca+a2)
 ☆b3=b・b2 (b3はbとb2を約数に持つ)
  (c-a)≠b、(c-a)(c2+2ca+a2)≠b2より、
 ☆(c3-a3)はbとb2を約数に持たない
この矛盾を解いてフェルマーの定理を証明しよう!

ここで試しに(a,b,c)=(2,9,5)を代入してみましょう。
 ☆93=9・92 (当たり前ですね)
  (5-2)≠9、(52+2*5*2+22)≠92 (うん、合ってる合ってる)
 ☆(53-23)は9と92を約数に持たない
(えーと、53-23=117だから…あれ?)

(c3-a3)はbを約数に持ちます(持つことがあります)

よって、「あなたも解けるフェルマーの定理完全証明」は間違っていることが証明されました。


えーと、この人がフェルマーの定理の証明を始めたきっかけは 2000年に友人にピタゴラス数の話を聞いたからなのですが、 その友人が持っていた本というのが平山諦「東西数学物語」 …アンタそれ何時の本だよ(昭和31年)
まあ勿論古い=悪いというわけではありませんが、この本には重大な欠陥があるようです。
「直角三角形の三辺が整数になる全ての組をひとつの公式で書き尽くすことはできなかった」
小野田氏もそれを真に受け、
「とっくの昔に解明されていると信じ込んでいた私の無知を知らされ、思わずうなってしまった」
私は寡聞にして見たことがないのですが東西数学物語には本当にそう書かれているのでしょうか?
勿論現在では全ての数を書き尽くすひとつの公式が知られています。
d(m2-n2)2+d(2mn)2= d(m2+n2)2
…って私これ中学の時に知ったんですが。 数学者の端くれのつもりならこのくらい知っといてくださいよ。


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